1.CO22排出量、ゼロへのシナリオ パリ協定の最終目標は今世 紀末までに人為起源の CO2排出量をゼロにし、地球の気温上昇を 1.5℃に抑え込むことです。その第1ステップが過日の歴史的合意、 すなわち各国が自主的に提出した 2030 年までの CO2削減目標を確 実にクリアすることです。各国の CO2削減草案を 100%達成できても 気温上昇を 2.0℃以下に抑えらないため、各国には定期的なレビュー で削減実績を厳しくチェックされ、さらなる改善が課せられます。正 に、この第1ステップに成否がかかっています。第2ステップは 2050 年には各国の CO2排出量を現状から(70~80)%削減することです。 そして、2100年にはCO2排出量をゼロにするのが第3ステップで、こ れによって 1.5℃が達成できるシナリオです。 なお、ここで言う CO2は温室効果ガス(GHG)を指しますが、全 GHG を CO2換算で表わすことが通常なので、ここでも GHG をわか りやすく CO2と記しています。

2.CO2排出量、ゼロとは? CO2は人為起源の排出量がゼロに なっても自然界から排出されるので完全にゼロにはできません。ま た、CO2はきわめて安定した化学種で、その寿命は1万年以上です ので、今までに大気に排出され蓄積された CO2はそのまま残留しま す。そこへ新たな CO2が入り込んできますので、大気の CO2濃度は 高まり続け、温暖化が止まることはありません。できることは人為起 源の CO2排出量を可能なかぎり抑制し続け、「わずかな量」に抑え込 むことだけです。この「わずかな量」とはどれくらいでしょうか。