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LSEアカデミアニュース No.52 「パリ協定」遵守:再エネと原子力の攻防 (5) ~3Eトリレンマの実態:経済成長と地球温温暖化~

1.増加の一途:世界のエネルギー消費と経済成長 本号は世界に目を転じて温暖化防止の施策を考えてみます。 まず、世界における一次エネルギー消費量( )の推移を下図に示します。2018年は13.9Gtoe(toe: 石油換算値)、京都議定書の基準年1990年の1.7倍に達します。このエネルギーは経済成長のために投入され、2018年の実質GDP( )は84.6T$[T(tera):*1012、$: 米㌦]、1990年の2.2倍に達しており、同じ利得を得るに要するエネルギーは▲30%省エネになっています。一方、温暖化の要因である化石燃料由来のCO2排出量( )は33.7Gton-CO2、1990年の1.6倍で、一次エネルギー増加率よりやや低く3Eトリレンマ【経済(Economy)成長にはエネルギー(Energy)の投入が不可欠だが、環境(Environment)を悪化させる、つまり3Eの同時解決は困難】を解決するディカップリング【エネルギー投入増加率よりもGDP増加率とCO2排出減少率が共に高い現象】が実現している。注目すべきトピックスです。 一方、世界の総発電量は2018年26.6PWh[P(peta): *1015]で1990年の2.2倍:と急速に電化が進んでいます。2040年のエネルギー消費は現在より+30%増加し、その40%を電力が占め、再エネがその40%に達するとの予測がなされています。今後も世界経済成長のため電力を含むエネルギー需要は増加の一途を辿りますので、CO2排出量増加率を低下させる省エネを含む低炭素・脱炭素化ビジネスを進展させ、パリ協定「2.0℃約束」を果たさねばなりません。

By |2019-09-24T15:32:46+09:009月 24th, 2019|会員専用, 理事支援メンバー|0 コメント

LSEアカデミアニュース No.51 「パリ協定」遵守:再エネと原子力の攻防 (4) ~ パリ協定後 3 年間の評価:エネルギー白書 ~

1.エネルギー白書 2019 6 月に閣議決定した「エネル ギー白書 2019」のトッピクスは「パリ協定を踏まえた地球 温暖化対策・エネルギー政策」です。パリ協定が 2015 年に 締結されて3 年経過しましたが、我が国のみならず主要国の 温暖化対策・エネルギー政策が目標通りの実績を上げている のか、我が国は主要国と比較してどのように評価されるの か、を本白書で記述されているので紹介してみます。 2.CO2 排出削減への施策 下図は我が国が世界に公言 した「約束草案:CO2 排出量を2030 年までに2013 年比で ▲26%削減する」ための中期目標値へのアプローチプロセス (破線)と直近3 年の実績(プロット)を示します。再エネ比率と非化石比率はそれぞれ全電源に対する(再エ ネ)と(再エネ+原子力)の比率です。図からわかりますよ うに非化石比率(赤)、再エネ比率(橙)、CO2 削減率(緑)、 最終エネルギー/GDP(青)の全指標いずれもが目標ライ ン水準で推移しており、堅実な実績を残しています。我が国 の目標値は前号で解説しましたように、各部門での最大実現 可能シナリオの積み上げですので、「物質主義に侵されない 倫理的ドイツ国民」の目標値に比しやや甘さがあるものの堅 実な施策が功を奏しているようです。 3.主要国の中期目標達成状況 そのド

By |2019-08-19T22:12:08+09:008月 19th, 2019|会員専用, 理事支援メンバー|0 コメント

LSEアカデミアニュース No.50 「パリ協定」遵守:再エネと原子力の攻防 (3) ~ ドイツに学ぶ脱原発・再エネ大量導入の現実 ~

1.ドイツの位置・気候・気質 南はアルプス山脈、中央はヨーロッパ平原、北は北海・バルト海にいたる北緯(47度~55度)、北海道より北の樺太北部からカムチャッカ半島南部に位置し、冷涼で曇りがち、比較的温和な海洋性の気候です。面積は日本の94%、人口は66%、GDPは世界4位の技術立国です。日本は島国ですが、独国は9か国と接し送電網があり、電力の相互融通が容易な地理的条件を備えています。 気質は現実的な頭脳と理想主義的な精神を兼ね備え、「物質主義に侵されない倫理的国民」を自負するほどです。 2.政策決定は【トップダウン+気候変動対応】 環境政策目標【CO2削減:2020年△40%、2030年△50%、2050年△(80~95)%】【再エネ比:2050年発電部門80%】【エネルギー消費量半減(2008年比)】はドイツらしい【トップダウン+気候変動対応】で、やや自尊心が先走った楽観的シナリオのように思われます。これに対し、我が国のエネルギー政策は【ボトムアップ+(3E+S)】で、原子力も再エネもすべて動員したバランス重視のエネルギーミックスでCO2削減目標2030年△26%を部門別に積み上げて設定しています。

LSEアカデミアニュース No.49 「パリ協定」遵守:再エネと原子力の攻防 (2) ~ 太陽光(PV)と風力(WT):主力電源化への課題 ~

1.主力電源の条件 3月に改訂した「エネルギー基本計画」には「再エネを最大限導入する」を「再エネの主力電源化を目指す」と明示しました。「パリ協定2.0℃約束」を果たすためには再エネを2030年には一次エネルギー国内供給の13%、電力部門の23%に高めると世界に宣言しました。電源23%の中味は水力9%、太陽光7%、バイオマス4%、風力2%、地熱1%。水力は従来の大規模水力がほとんどで、中小水力とバイオマスは小規模でほぼ開発済みで、地域との共生を図っています。したがって、太陽光(PV)と風力(WT)が主力電源化の焦点になります。主力電源化への条件は (1) コスト競争力の強化 前号で既述しましたが、PVとWTの発電コストは自然環境に強く依存するため地域変動幅が大きく、設備利用率の差が顕著です。年々漸減傾向にあるものの総じて大規模火力発電より高いのです。しかも、下図のように海外より未だ2.5倍ほど高い現状です。FIT(固定買取制度)→入札→自由競争(事業用で10円/kWh、住宅用で20円/kWhが目安)過程での自立化が急務です。

By |2019-08-08T14:43:23+09:008月 8th, 2019|会員専用, 理事支援メンバー|0 コメント

LSEアカデミアニュース No.48 「パリ協定」遵守:再エネと原子力の攻防 (1)

1.パリ協定「2.0℃約束」遵守へのシナリオ パリ協定の約束は【今世紀末の気温上昇を産業革命以前より2.0℃、できれば1.5℃以下に抑制する】ことです。これを果たすため我が国は【CO2排出量を2030年度までに2013年度比で△26%、2050年度に△80%(できる限り0%)削減】する約束草案を国連に提出しています。2013年度のCO2排出量は~12億㌧ですので、2030年には~9億㌧、2050年には~2.5億㌧以下に削減しなければなりません。この削減目標は第4次エネルギー基本計画で【どんなエネルギー源で「CO2排出ゼロ+経済成長」が成立するか !】という国是の下、産業・業務・家庭・運輸・エネルギー転換の各部門で技術とコストの課題や国内外の環境施策動向を踏まえて具体的に積み上げた実現可能な数値なのです。

By |2019-08-08T14:42:07+09:008月 8th, 2019|会員専用, 理事支援メンバー|0 コメント

LSEアカデミアニュース No.47 電磁波と健康:その係わり(8) ~ “知って怖がる”電磁波の長短:まとめ ~

1.自然電磁波は健康をはぐくむ? 自然界に存在する電磁波の代表は太陽光です。宇宙にはさまざまな宇宙線が飛び回っていますが、地表に届くのは大気圏に開いた2つの「光の窓」と「電波の窓」から入ってくる電磁波だけです。「光の窓」から入る太陽光は主に波長 の可視光で、古来より私たちの生活リズムや光合成、ヒトや生物の進化にも深く関わり、私たちの命を育くんでくれる大切な電磁波です。また、「電波の窓」から長波長 の宇宙線が時折入ってきますが、これが開いているお蔭で人工衛星との通信ができ、今日のAI社会が実現しています。 では、健康に悪影響を及ぼす電磁波とは何でしょうか? 2.人工電磁波に注意! 地磁気や雷光、鉱石からの放射線なども自然電磁波ですが、私たちの健康に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。問題は人工電磁波です。 人工電磁波は導体に電流を流すと導体周りに磁場が発生(アンペールの法則)しますが、交流のように変動電流ですと磁場も変動するので新たな電場を誘導(ファラデーの電磁誘導の法則)し、次々と磁場→電場→磁場→電場・・・と連発発生します。つまり、交流であれば必然的に電磁波を発生しますし、積極的に導体に流す電流の周波数と強度を変えるだけで任意の電磁波を自在に発信することができるのです。一方、自然電磁波はその発生過程からも明らかなように、一定の周波数を有せず不規則で強度も桁違いに小さいのです。 しかし、次節のように人工電磁波は私たちの生活に欠くことのできない通信や医療の暮らしのインフラであり、人工電磁波を避けて生活できない環境なのです。 続きはこちらから 190415 財団機関誌_LSEアカデミア・ニュース_47

LSEアカデミアニュース No.46 電磁波と健康:その係わり(7) ~ ガンを誘発する電磁波規制 ~

1.電磁波と身体組織との共振 身体組織は誘電体であり、サイズも頭・腕・脚などの数十cmから細胞などの数十nmにわたります。このため、電磁波にさらされると波長とサイズが調和するとアンテナ現象が、波長と固有振動数が合致すると共振現象が誘起されます。アンテナ現象も共振現象ですが、いずれも組織内に誘導電流を発生させるので、そこの組織は健康をつかさどる脳からの本来の生体信号電流と人工電磁波で発生した誘導電流との区別ができず、正常な健康維持機能が乱れ、身体に変調をきたす結果となります。 以上の概要を43号と44号で、生体情報伝達メカニズムと「電磁波の“がん(癌)”誘発メカニズム」を45号で概説しました。関心の高い“がん”との関わりを再考します。 2.健康は健全な新陳代謝から 身体各組織は60兆ほどの細胞で構成され、このうち1兆ほどが毎日入れ替ります。1個の細胞が2個へ分裂し元と同じ細胞に復元・成長する新陳代謝によって健康が維持されます。 続きはこちらから 190415 財団機関誌_LSEアカデミア・ニュース_46

By |2019-08-07T21:44:33+09:004月 18th, 2019|会員専用, 理事支援メンバー|0 コメント

LSEアカデミアニュース No.45 電磁波と健康:その係わり(6) ~ 細胞レベルの健康影響メカニズム ~

1.これまでの復習 これまで5号にわたり解説してきました電磁波と健康の係わりの要点を復習してみます。 40号「ヒトは電磁波に慣れている?」では、太陽からの電磁波の内、大気に吸収されない「光の窓」と「電波の窓」を通り抜けた電磁波に対して、ヒトは太古より免疫力があるものの、自然電磁波の強度は人工電磁波と桁違いに小さく、周波数も一定でなく幅広く分布しているので、狭い周波数帯に強烈に集中した人工電磁波への免疫力は弱いのです。 41号「電磁波の発生メカニズム」では、変動する電流があれば磁場が生じ、それが電磁誘導で新たな電場を発生させ、これが次の磁場→磁場と繰り返しながら光速で伝搬するのが電磁波です。このエネルギー源である電流の周波数と強度を変化させれば任意の人工電磁波を発信できるのです。 42号「暮らしのインフラ:電磁波」では、ラジオ・テレビ・スマホ・無線通信・レントゲン・放射線治療・食品加熱滅殺菌など私たちの暮らしを支えるインフラが人工電磁波です。一方、健康を害するデメリットにも留意すべきなのです。 43号「人体は電磁波を呼び込むアンテナ」では、浴びている電磁波の波長が人体の部位・組織のサイズとほぼ同じであると人体に電磁波を呼び込み、その電磁場が誘導電流を生じ健康をつかさどる生体制御電流を狂わせます。これによる刺激作用で該当の部位・組織に変調をもたらします。この「アンテナ」以外に人体の部位・組織の固有振動数が電磁波振動数と一致すると「共振」し、熱作用や電離作用を引き起こし、時として細胞分裂の遺伝子転写ミスを生じさせます。 44号「家電製品からの電磁波と健康影響」では、使用中の家電製品はすべて電磁波を放射しますので、健康への影響が懸念されます。そこで、100kHz程度以下の低周波磁場では200μT以下 [T: テスラ]、高周波電磁波では電力束密度1 mW/cm2以下、全身平均SAR(比吸収率)2.0W/kg(推奨0.08 W/kg)以下、などの規制値が制定されているのです。 続きはこちらから N045 LSEアカデミアニュース

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