LSEアカデミアニュース No.108 深刻化する異常気象のメカニズム再考(5) ~「エルニーニョ」「ラニーニャ」による長期変動 ~
1.エルニーニョ現象 赤道近くの太平洋上には通常、図[平年]のように東から西に向かう「貿易風」が吹いており、海面近くの暖かい海水を西側へ吹き寄せるのでインドネシア近海に暖水がたまります。この「暖水プール」は世界で最も海水温が高く、上空へ熱と水蒸気を大量に供給して積乱雲を発生させ大量の雨をもたらします。一方東側ペルー沖では、貿易風によって運ばれた海面近くの海水を補うため深層の冷たい水が湧き上がってきます。このため平年より「東側の海水温は西側よりも低い」状態になっています。 しかし、図[エルニーニョ現象]のように何らかの理由で「貿易風が弱まる」と西側にたまっていた暖水がインドネシア沖の熱帯太平洋から日付変更線を経てペルー沖辺りまで戻っていき、貿易風も弱くなって風向も西風となってペルー沖の水温がインドネシア沖より高くなります。この状況は貿易風を弱く西風にする作用があるので長期間(3~6年)続きます。これを「エルニーニョ現象」と呼んでいます。 続きは会員ページより