LSEアカデミアニュース No.63 新型コロナウイルス:知って行動を! (4) ~ ウイルス・細菌の消毒メカニズム (2) ~
前号の「石鹸+手洗い」「エタノール」「次亜塩素酸」に引 き続き、本号は“エア・フレッシュ”に関連する「紫外線」 「オゾン」「光触媒」および「熱」「太陽光」についてのウイ ルスと細菌の消毒メカニズムを解説します。 1.「紫外線:UV-C」の消毒メカニズム ウイルスと細菌 の増殖はそれら病原体の核に存在する遺伝情報、すなわち RNA とDNA の指令によるものです。RNA とDNA は図1 に示すように、紫外線領域の光波長と共鳴し励起→解離して 自身の遺伝子情報構造を破壊してしまう性質があるのです。 すなわち、波長 付近の光を最 も良く吸収す るので、この 付近の波長を 放射する照明 灯を探せば良 いことがわか ります。図2 は低圧水銀灯が放射す る線スペクトルで、波 長 の光 が突出して強力で、そ の放射エネルギーは RNA/DNA の鎖を切 断するに十分なのです。 のUV-C ランプは無害化効果が 高いので殺菌灯とも称 し、点灯しておくだけ で消毒できるので医療・ 介護・理容等に広く導入 されています。ヒトの細胞核には到達しませんが、皮膚や眼 に入るとガンや白内障の害があるので注意が必要です。 続きは会員ページより
1.「消毒」とは ここでは、「私たちの健康や生命を害するウイルスや細菌の病原体を除去する」ことを「消毒」と定義します。正確には、「細菌」は細胞をもち自ら増殖する生物ですので、「殺菌」などと言いますが、ウイルスは細胞をもたずヒトなど他の細胞に寄生して増殖する非生物ですので、「不活性化」と言います。「消毒」は両方に使用できます。 前号で、新型コロナウイルス COVID-19 を消毒するには「石鹸+手洗い」がベスト、次が「70%エタノール消毒」と記しましたが、他にも「次亜塩素酸」や「加熱」、あるいは代表の森が開発した空気清浄機〝エア・フレッシュ〟の「オゾン」「光触媒」「紫外線」などによる消毒方法もあります。 今回はこれらの消毒メカニズムを考えてみます。原理を知って実践すればより一層の消毒効果が期待できるからです。 続きは会員ページより
1.突然変異で強烈化する COVID-19 新型コロナウイルス COVID-19 は頻繁に突然変異し、その度に感染力が強烈になっていくことがわかってきました。その理由はCOVID-19 が反応性の高い(安定性の低い)RNA ウイルスだからです。通常、生物の細胞は生命維持のため増殖しますが、同じ細胞を産生するため設計図が組み込まれています。 それがDNA で、下左図のように2 本の鎖が二重らせん状にからまり、2 本の鎖を 4 つの塩基(青:C:シトシン、緑:G:グアニン、黄土:A:アデニン、赤:T:チミン)が組み合った支柱が強固に支えているきわめて安定性の高い構造です。一方、RNA は右図のように1 本の単鎖に組み合う前の4 つの塩基(赤が茶のウラシルに替わっている)が刺さっているだけの不安定な構造です。RNAは、DNA が複製されるとき遺伝情報を複写、原料を調達、それを合成する役割を担っており、役割を終えれば消滅します。しかし、ウイルスには遺伝物質としてDNAをもつ「DNA ウイルス」とRNA をもつ「RNA ウイルス」が存在しますが、大きな違いは上述のように「遺伝情報の安定性」にあり、COVID-19 は不安定な「RNA ウイルス」で、宿主細胞のDNA 変位速度の100 万倍もの速さで変異し、しかも鎖が長く非常に多くの遺伝子を含むので頻繁に遺伝子のミスコピーによる突然変異が発生します。新型ですので消滅させる酵素は存在せず、その感染力は強靭になるばかりです。これが特効薬やワクチンの開発を遅らせる要因です。 続きは会員ページより
1.プロローグ 全世界を感染の脅威に落し入れ、経済活 動を一気に停止させた新型コロナウイルス COVID-19 禍を 「正しく知って怖がらず行動する」ための条件を探ってみま す。特効薬とワクチンが私たちのレベルまでに届くのがベス トの条件ですが、容易にはクリアできない条件のようですの で、とりあえず私たち一人一人ができる次善の条件を正しく 知れば怖がることなく行動でるはずです。まず、新型コロナ ウイルスの今までと異なる「怖さ」から知ることにします。 続きは会員ページより
1.再考:「パリ協定:2.0°C約束」へのシナリオ 本号は 12 回にわたった本シリーズの総括です。まず、これを取り 上げた動機は1パリ協定「今世紀末の気温上昇を産業革命以 前より 2.0°C、できれば 1.5°C以下に抑える」ため、2我が 国は「化石燃料からの CO2 排出量を 2013 年度比で 2030 年 度までに▲26%、2050 年度に▲80%削減」の約束草案を国 連に提出、3「具体的な CO2 排出量を 2013 年度の 12 億トン を 2030 年度までに 9 億トン、2050 年度末には 2.5 億トン以下に 抑制する」という自主目標を「どう達成するか」、とくにゼ ロエミッションとは言え解決すべき課題の多い「再エネと原 子力をどう活かすか」を考えてみたいと思ったからです。 続きは会員ページより